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【Extreme Hearts振り返り SSS5話捕捉:Extreme Hearts(作中番組)の構造】

Twitterで連載していた、Extreme Hearts放送当時を思い出しながら振り返る、「Extreme Hearts振り返り」シリーズをブログにアーカイブしたものです。

こちらはSSS5話の振り返りの補足としてエクストリームハーツの構造について考察した記事となります。SSS5話の振り返りは以下のリンクからどうぞ

【Extreme Hearts振り返り SSS5話】 - おしゃべりば

【ExHSSS5話感想:Extreme Hearts(作中番組)の構造】は[2022年11月30日]にTwitter上で公開されました。

 

【ExHSSS5話感想:Extreme Hearts(作中番組)の構造】

(以下の文章は個人の感想であり、妄想です。また、一部で現実のスポーツ業界の話に触れています。私はスポーツ業界に関して素人で、説明の簡単のため乱暴な言説がでてくる箇所もあり、不快に思われる方もいるかもしれません。すみません……)

 

作中番組Extreme Heartsは変な番組である。スポーツで戦うのに、その結果得られるのはステージの出場権であり、ステージでは芸能の技術を見せなくてはいけない。目的と手段がまったく一致していない番組である。

 

SSSでMay-beeが説明しているようにExtreme Heartsは自社製品の広告、地域活性、新たなタレントの発掘と売り込みが主な目的である。出場するのは芸能人(を目指す人も可)、戦う手段はハイパースポーツ。トーナメントで勝ち進めばステージの出場権が得られる。番組の構成自体はシンプルなのだが……。

 

違和感があるのは、ハイパースポーツとステージを同時に扱っているからだ。芸能未経験な咲希と純華が陽和にカバーしてもらいながら最初のステージを終えているように、ハイパースポーツの技術とステージの技術は全く関係がない。なぜこの組み合わせなんだ……。アニメの最初からずっとそう思っていた。

 

番組の構成について理解が進んだのはSSS5話で純華の経歴が語られた時だ。純華は男子に混じってシニアリーグの春大会で結果を残し引退したとのことだった。この話を聞いたとき、純華はどうして野球を続けなかったのか疑問だった。

 

いろんな理由が想定されたが、私が最初に思い当たったのが、野球の男女リーグの規模の差だった。ExHは2048年の話なので設定上はどうなっているのかわからないが、現代では女性のプロリーグは赤字で無期限休止状態となっている。日本女子はワールドカップで6連勝するほどの強豪にもかかわらずだ。

 

このこと自体は純華が野球を続けなかった要因として存在するかはわからない。アニメの読みとしては完全な推測でしかないのだが、考えていたときにふと、そういえばスポーツも人気商売だな……。と思った。そこに思い至ったとき、Extreme Heartsがなぜこんな変な番組になっているのか腑に落ちた。

 

スポーツは人気商売である。というのも主なマネタイズ手法が広告、物販、チケット販売、TV放映権だからだ。チームや選手、スタッフ、あるいは競技そのものにいるファンの数がそのまま業界の規模を押し上げるといってもいいだろう。芸能も当然人気商売であり、マネタイズのモデルはほとんど共通している

 

スポーツと芸能は、マネタイズのモデルにおいて共通点があるのだ。これは冷静にアニメを見たらすぐに気が付いたかもしれないのだが、私はアニメとしてヤバい組み合わせ過ぎてSSS5話まで全然気が付かなかった。Extreme Heartsはこのシナジーを活かすことを考えた番組だと思われる。

 

だいぶ乱暴な言い方になってしまうが、人気商売で実力はそこまで関係ない。先にも上げた日本の女子野球選手も実力は世界レベルである。芸能でもダンスや歌がうまいだけでは売れるとは限らない。ExHでは陽和がまさしくその立ち位置のキャラクターだ。重要なのは、マーケティング、プロモーションである

 

Extreme Heartsは作中世界で大人気番組である。つまりマーケティング、プロモーションに成功している。これも見始めた時には違和感があった。芸能人が複数スポーツをする番組を見て面白いのか?そんな番組が流行るのか?と。

 

しかし、スポーツと芸能のシナジーを活かすというシステムを組んでいるのだとしたら、流行る理由は十分あると思った。スポーツと芸能には共通する重要要素があるからだ。それが「スター」の存在である。スポーツにも芸能にも業界を引っ張るスターがいる。その数や質が業界を左右する強力な存在である。

 

Extreme Heartsはスターを生み出すことに注力した作りになっているのではないか?大会を勝ち上がれなかったとしても、パフォーマンスで輝くものがいるかもしれない。逆にスポーツで素晴らしい見せ場をつくる人もいるだろう。スポーツとステージ、このどちらで輝いてもスターになる可能性がある。

 

スターを生み出すシステムとしては、「複数スポーツ」も強力な装置だ。全員が全スポーツに習熟できるわけではない。とするとどうしても得意不得意がでる。あるスポーツでは活躍できなくても、他のスポーツでは活躍できるかもしれない。

 

芸能人で不慣れなスポーツがあるという免罪符がある以上、視聴者はビッグプレーを生み出した英雄に注目するし、ミスはしょうがないものとして流される。そうした結果、ビッグプレーの記憶が強く残り、得意分野が注目されるようになるだろう(作中では苦手分野の多い陽和がこれを体現している)。

 

試合を変えた英雄はそのままスターになる可能性を秘めている。このようにExtreme Heartsはスターを生み出す複数の間口を持っている。これは強力な構造だと思う。しかも、間口が広いのはスターを生み出す入り口だけではない。Extreme Heartsは視聴の間口もかなり広いと言える。

 

芸能とスポーツが結びついているため、芸能人が好きでな人、スポーツが好きな人両方に視聴のチャンスがある。さらにステージもあるので、ステージ映像などを見て興味を持つ人もいるかもしれない。この横方向への広がりはExtreme Heartsの強みだ。

 

横方向への広がりは番組だけでなく、参加者である芸能人自体が広がりを持っている。RISEのブログ、SSS3話のスマイルパワーが非常にわかりやすい例で、動画配信やSNSの活用によって参加者自身が宣伝してくれる。これはステージで成り上がるという番組の要素上、より活発に行われるように仕組まれている

 

参加者が宣伝者である都合上、Extreme Heartsは参加チーム数が命だ。その質は問わない。チームの強さと宣伝力は一致しないからである。スポーツが弱くて勝ち上がれないようなチームでも芸能人としては超一流かもしれない。そういった人たちに参加してもらえるだけで宣伝効果としては十分なのである。

 

そうなると人数不足などの理由で参加できないチームがいるのは損失である。世の中のグループで2桁人単位で人がいるグループはそう多くないだろう。1人からでも参加できるようにしておいた方が損失は少ない。そのためにPロボ導入ルールがあるわけだ。Pロボめちゃくちゃ番組に貢献しとるやん……。

 

Extreme Heartsは試合数が異常に多いのだが、それはこうした質より量の考えからだと思われる。参加チームの質を問わなくてもギアがあるので画面の面白さは確保できるし、勝ち上がりトーナメントによって後半の試合の質は自動的に保たれる。よくできてるぜ……。

 

スターを生み出すシステムと、横方向への多様な宣伝能力、この二つがExtreme Heartsの番組としての強みである。そしてそれを実行するために、「複数スポーツ」、「Pロボ」、「ギア」といった要素は効果を発揮している。

 

Extreme Heartsは変な番組だ。しかし、変なだけの理由があるのかもしれないと思えた。複数スポーツとステージがあるのはスター発生と視聴者の間口を広げるため、Pロボは参加チームを増やし宣伝者を増やすため……。変な番組だが、合理的な番組なのかもしれない。と思ったのだった。【終】

 

SSS5話の振り返りは以下のリンクからどうぞ

banban52.hatenablog.com